「みんなの学校」木村先生との座談会

~PTAは今…~

 皆さん、「みんなの学校」という映画をご存知ですか?舞台は大阪市住吉区にある市立大空小学校。みんなが一緒の教室で学ぶ普通の小学校、だけど…そこには、どんな子も包み込むやさしさと、ちょっとした厳しさがあり、その雰囲気を地域全体で作っている、映画を見たひとはそんな感動を覚え、共感する物語です。木村先生は、小学校開校から校長先生としてこの学校にいたそうですが、地域の中の「みんなの学校」を作り出すまで、しっかりとした思いをもって取り組んで、徐々にみんなをつなげてきた、そんな先生です。今回は、役員のなり手不足や、任意加入など、日々運営に頭を悩ませる神奈川県PTA協議会の役員と、木村先生との座談会を開催しました。それでは、スタートです。

 

 

 

―まず、木村先生のPTAのイメージや、実際に働いていた大空小学校のPTAの話はありますか。

 

 

 

木村先生 新たなものを作っていこうとする時、大事なことは何か、わかっているんだけど、いろいろな事情があって中々出来ない時ってある、そういう時は、過去をすべて断捨離する。全てなくなったらあとは作るしかない。社会のニーズはどんどん変わっていて、昨日の正解が今日の正解とは限らない。

 

12年前に大空小学校が生まれた時に、私も赴任して、新しいタイプの学校をつくろうということで、これまで経験してきた学校の悪しき習慣を、全員が紙に書き上げるということをしたことがあった。校長は校長室で大きな顔しているだとか、教職員だけが子どもを育てているわけでないといったことなどを、一覧にした。その中からどれか要るものがあるかどうか考えたが、全部要らなかった。PTAも要らない、必要性ないとなった。大空はおっきい小学校から分離したが、分離した地域の人はPTA役員の経験がない、PTAは大きい方の地域のブランドだったから、やり方もわからない。なら、出来なかったらやめとけば、必要だったら作ればいいということで始めた。PTAをなしにしたら学校運営がスリムになった、組織との関わりがないから、夜に会議で残ることもない、先生が全部子どもに時間をかけられる。

 

 

そのうち、子どものために何かしたいという母親がいた時が、最初のPTAの感触だった。その母親がやりたいのは、防災キャンプを学校でやりたいということだった。どうやって人を集めるのか不安はあったが、その企画を発信したら、いっぱい人が集まって、やろうぜとなり、いっぱい子供も来た。そのイベントが終わったら、一旦それで解散。そのうち、やりたいことがある度に、バザーなどを単発で人を募ってやるようになった。そのまま何かやろうとする人がいなくなったら、この暖かい空気がなくなるなということで、開校3年目くらいに組織が出来た。子どもは地域の学校で一緒に学んでいる、子どもを育てるのは保護者だけでなく地域住民で、子どもを見ようとする人はみんなサポーター。多様化する中で画一的なものでは解決できないから地域で解決する。サポーター(supporter)が、教育(education)という観点で、集まる(association)という意味で、SEAができた。

 

お願いして役員になるような組織はやめたらいいと思う。勇気が要ることだが、それではいいと思うことができない。おかしいと思いながらそれをやっていくと、子どももそういった悪い同じ空気を吸う。

 

 

 

―最近は神奈川県PTA協議会でも任意加入の問題を検討しているが、それが先生の話と結びつく。サポーターという形はとてもいい。熱がある人がいれば継続性が生まれる。保護者が動いて頑張れば、他の人も動くし、子どももついてくる。自分の地域でもある古墳が焼失したときに、子ども達が実行委員を作って復活しようとなった、それに親が乗って、それぞれの子どもに役割を与えたら、子ども達が生き生きと動いた。そういった共感がつながる活動をする必要がある。

 

 

 

木村先生 任意加入の問題とか、そもそもPTAはいい組織なのかということはよく耳にするが、大空小学校の人がそんなこと聞いたら、なんて非生産的な話しているんだろうと思うだろう。時代が変わって、任意加入だから入らないという人、会費払わないよという人がいるが、それを言わしている組織の在り方が今のニーズに合ってないことを認識して、もっと毅然と「子どもの周りのすべての大人はすべての子供のサポーターである。」と言うべき。自分の子供が育ってほしかったら、自分の周りの子どもを育てる。入学式で今日から皆さんは保護者ではなく、260人の大空の子供のサポーターでなんですよと言った。それを、バトンタッチした校長も言えば学校がぶれずに続く。「時間があったら授業には入ってくれ。」とは、私は言ったことはない、地域住民として当たり前のようにやってもらっている。最初は、そういった考えに対して、いろんな批判があったけど、社会のニーズに合わせて学校もPTAも変わり続けなければならない。最初の1年は町会長達も怒っていたが、あえて学校からは、そういった自治会等の組織とのパイプは持たなかった。すべての子が学ぶのが学校、幸せは人それぞれ違うけど、そういった中でいっつも一緒にいるのが社会。

自分のこれまでの学びは、自分で言うことは毅然と言うということ。教職員、地域住民、保護者は全部、子どもの幸せを願ってサポーターになる、ここは強く言ってきた。

 

―みんなPTAに身構えて入ってくる。自分は入学式で「すべての親が手をつなぐ。」と言ったが、正解かどうかわからない。

 

 

 

木村先生 手をつなごうとすると、つながない人がいる、みんなその失敗体験を持っているから拒否反応が出る。言葉って大事で、過去の失敗経験を彷彿とさせる言葉は使わない方が良い。PTAと言うだけで、小学校から子どもたちがそういう手をつながない空気を吸っている。悪しき過去を引きづっている時は、過去の産物を無くした時に、何ができるか自分で考えるようになる。唯一の条件は、すべての子供のために、自分のできることをすべての親がやる。あと、SEAみたいに、ネーミングは大事。

 

 

 

―役員選出や活動などが公平でなくてはダメ、という論調があるが。

 

 

 

木村先生 平等とか公平という言葉は、先生も親も一歩足を出してみるものの、その言葉で引き下がる雰囲気がある。日本社会で「平等」「公平」に反対する者がいないから、これを印籠にして出すことで成り立っている部分がある。そうではなく、どういうことを公平、平等というのか、全ての人が納得するような説明をする。例えば、ここに一枚のピザがある、あなた達3人で公平、平等に3等分する、さて、どうやる?

 

 

 

―角度を測って3等分したらよいのでしょうか。

 

 

 

木村先生 なんで私に聞くの?話し合って決めたらいいでしょう。合意って難しいけど、11人の親がそれぞれ過去を持っているから、これが公平であるということを自分の価値観で押し付けるのは違う。3人が対話をして、3人で納得する分け方が公平だと思う。障害のある子ない子がみんな一緒に学んでいたら、それぞれのやり方がある。何が公平か、みんながそれで納得すれば公平であり、そういった場を作ることをリーダーがする必要がある。

 

 

 

―戦後の流れの中で合理性を追い求める社会を形成してきたが、これからはそれぞれのストーリーを受け止めて、自由の相互承認を取り合う必要がある。ただ、PTAの社会では損得感情もあり、中々うまく回らないと感じる。

 

 

木村先生 それをちゃんとやらなかったら、次の子ども達が大変な社会を作ってしまう。大空小は9年間文句が出なかった。それは、自分が作るからで、そこに上下関係があって、校長の言うことを聞かなければならないとなったら文句が出るようになる。私が入学式に言うことは、「今日から保護者を捨てて、皆さんはこの学校のサポーターです。」のほかに、「大空は文句を受け付けない学校です。」と言い切ってきた。大空小は6年生になったら、全員リーダーになる、1年生の時から条件はずっと引き継いでいて、1つは「先生に頼らない」、2「しんどいことを自分がする」3「文句を意見に変える」、これで6年生になればみんな前を向いて卒業する。子どもがそうやっていたら、大人もやるとなる。文句は未来につながらないうえに主体性がない、意見はどんなに耳に痛くても、その人の主体性があり未来につなげたいと思う。文句を意見に変える力を大人は持っている。

 

―文句は言えるが、どうしたらいいかわかっている人がいない、説明できる人がいない。

 

 

 

木村先生 その状況では、大人が人を信じられなくなってくるし、子どもはその空気を吸う。1人で何かやろうとするのは大変だけど、11人がつながれば、徐々に雰囲気は溶けていく。

 

大空のスタートはもっと凍結していた。おっきい学校のブランドの地域の隣に、格下の大空ができて、何でそこに子供を通わせるんだという意見もあり、自尊感情もなければ文句ばかりで、お手上げの地域だった。ただ、信じたら変わるかもしれない。相手を頑なな状態から変えるために自分を変えよう、相手を信じてみよう、と思うと相手も変わるかも、と思ってやってきた。

 

 

 

―まずは相手を好きになろうということですね。では、PTAの組織について、特に神奈川県PTA協議会に対する期待があれば伺いたいのですが。

 

 

 

木村先生 上層部がどこを向いて活動をしているか、どこを向いていますか?いかがですか?

 

 

 

―自分の子供が幸せになる世の中。それを考えれば、周りも幸せになる。

 

―活動も見直す時期に来ているように思えるが、みんなが子どものために何かやれるように促す活動が出来ればと思う。

 

―地域のイベントをやる時は子どもに戻って全力でやる。心から笑っている。東北大震災後に被災地にも行って、悲惨な状況を見た、向こうの子は当時本当に笑えていなくて、それを変えるのは大人で、まずは自分が笑おうという感覚を持った。

 

 

 

木村先生 そういう風に動かして、自分がいいよねと思って動いてほしい。そうであれば子どもたちが卒業しても地域の大人として、関わってくれる。

 

 

 

 

 

 

 

2部は、神奈川県PTA協議会の枠を取り払って、その場にいた保護者の皆さまと場を共有しました。それでは、第2部のスタートです。

 

 

―まずやってみてというのが共感した。気になったのは、会長交代で思いが途中であったりするので、いなくなった後でも見守りでもなんでも関わっていけるといいと思うんですが。

 

 

 

木村先生 過去の人間は今を作る空気の中では邪魔で、今を作っている人たちは、苦労をするから前に向ける。過去の人間は活用はしてもらっていいが、姿は見せない方が良い。

 

 

 

―地域の人たちが残ることで安心するということもあると思うが、距離を置くということと現場の人が大事ということは分かった。

 

 

 

木村先生 あの映画は校長がリーダーシップを発揮しているんだと見る人が大半であるが、そこだけは違う。校長と教職員、学校と保護者、地域の人の関係性が対等につながるかということ。子どもも人と人として、リーダーになればなるほど対等な関係を築こうと思うことが大事。

 

 

 

―みんな同じような問題を抱えている。地域の教育長が絶滅危惧種的なのはPTAと部活動と言っていた。

 

 

 

木村先生 PTA役員は役職、地位と思われている。自分に学びがあるから楽しいよという空気をどう出せるか。

 

 

 

―その雰囲気を作れなかったら弊害が出てくる。

 

 

木村先生 大人自身が楽しいことを目一杯やったら、子どもは大人を好きになる。大空は地域のじいちゃんが来て生徒の問題をのぞき込み、「難しいな、お前賢いな。」と言えば、子どもが「教えたろか。」となる。いつも子供は横で学ぶ大人の姿を見ている。これにはお金も要らない、先生も要らない、子どもは自ら育つ。校長代わっても、地域の人は根を張り続ける土、いわば教職員は風、どんなに人が替わろうとすべての子供が学ぶという理念が一つであれば、何かで傾きかけても土に戻される。いい肥料ばっかりあげなくてもいろんなものがある土が良いものが育つし、強くなる。まぜこぜの多様な土の中で子供が根を張ればよい。風(教師)に動かされていたらあかん。

 

―まず大人が笑おうということに共感した。

 

―周りの大人は全ての子どものサポーターだと思う。ただ、地域の見守りで自分の子供でなくても関係なく注意することを受け入れられない親がいる。広めるにはどうしたらよいか。

 

 

 

木村先生 あきらめないこと。この人なんでわからないの、という考えをやめ、そんなものなんだと思うこと。「わからないの?」の親の子供も不幸になる。対話していったら、10のうち1はあたるかもという気持ちでいること。人を大切にするということは、多様でひとつの正解がない。ないから問い続ける。それが学校の学び。問い続けるからみんなが楽しくなる。そんな風に思うのはそんな風に思う過去があるからで、相手はなかなか変わらない。じゃあ、自分がどう変わればいいかという発想があれば物事は変わっていく。無理はしんどいから怒りたいと思ったら怒ったらいい、そのあとで悪いと気付いたことは謝ったらよい。

 

一番しんどい子がその場の環境を作る。皆さんは大事な組織で、それなりのポジションが前向きな力を出す。一番しんどい子が県の中で、教育を受ける権利の中で、その子をほっといてどっちに向かうんだということ。良いものは良い、おかしなものはおかしいと言え、その子を見守るんだという力を出して、存在価値を出して欲しい。(完)

 

 

 

 皆さん、どうでしたか?木村先生の一つ一つの示唆に富んだお話を読んで、信念、やさしさが溢れんばかりに伝わってきませんでしたか?確かにPTA活動は、大変なこともあると思います。だけど、無駄を省いて、お互いを認め合い、無理なく参加できる体制を作ること、活動する時は思いっきり楽しんで、自分の笑顔を子供に伝染させること、そして、何より思いをしっかり持つこと、こんな根底をしっかりと持って、みんなをつなげることが出来れば、もっともっと我々の活動は共感を呼ぶかもしれません。木村先生、ありがとうございました!

 

県Pフェイスブックにて情報発信をしていきます。FBページへの「いいね!」をよろしくお願いいたします。
https://www.facebook.com/ptakanagawa

 

 

<お問い合わせ>は

  コチラ から!

 

◇ 役 立 つ 情 報 ◇

武勝美先生
武勝美先生

エコー教育広報相談室(無料)

PTA広報づくり
なんでも相談室

神奈川県

子ども・若者相談機関案内


県教委発行・平成25年度版

PTA活動のためのハンドブック

 

県教委発行・平成24年度版

家庭教育ハンドブック「すこやか」

 

県教委発行・平成26年度版

元気な学校づくり通信「はにい」

 

県教委発行・平成26年度版

かながわの学びづくりプラン